設立のキモは定款づくりにあり

目次

定款は会社の「憲法」

会社の名前や取締役など主要な事項を決めた後、それらをもとに定款を作ります。

定款とは、会社の組織や運営についての基本ルールを書いた書面のことです。

民法第34条によると「法人は、法令の規定に従い、定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う」とのこと。会社とは、定款の目的で定めた範囲内で、人と同様の権利を有し義務を負う存在であり、定款の内容はそれほど重要です。

「会社の憲法」と言われるゆえんでもあります。

本やネットを参考に自分で定款のたたき台を作る

最近では、本やネットを調べれば、定款のサンプルやひな形が多く掲載されていますので、ご自分で定款を作ることは十分可能です。(ただし、後に詳しくご説明しますが、ひな形で作った後にご自分や専門家の目を通して、十分に内容を吟味されることをおススメします)

例として、日本公証人連合会ホームページから一番番シンプルな小規模会社(株式非公開、取締役1名、監査役非設置、会計参与非設置)のひな形をダウンロードし、株式会社おがわ(架空の会社です)の定款を作ってみました。(赤字部分が定款を作る前に決めておくべき会社のカタチで決めた会社の基本事項です

 

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株式会社おがわ 定款

第1章 総 則

(商号)

第1条 当会社は、株式会社おがわと称する。

(目的)

第2条 当会社は、次の事業を行うことを目的とする。

  • 〇〇〇
  • ▽▽▽

⑶ 前各号に附帯又は関連する一切の事業

(本店所在地)

第3条 当会社は、本店を埼玉県さいたま市浦和区に置く。

(公告方法)

第4条 当会社の公告は、官報に掲載する方法により行う。

 

第2章 株 式

(発行可能株式総数)

第5条 当会社の発行可能株式総数は、100株とする。

(株券の不発行)

第6条 当会社の発行する株式については、株券を発行しない。

(株式の譲渡制限)

第7条 当会社の発行する株式の譲渡による取得については、取締役の承認を受けなければならない。ただし、当会社の株主に譲渡する場合には、承認をしたものとみなす。

(基準日)

第8条 当会社は、毎年3月末日の最終の株主名簿に記載又は記録された議決権を有する株主をもって、その事業年度に関する定時株主総会において権利を行使することができる株主とする。

2 前項のほか、必要があるときは、あらかじめ公告して、一定の日の最終の株主名簿に記載又は記録されている株主又は登録株式質権者をもって、その権利を行使することができる株主又は登録株式質権者とすることができる。

(株主の住所等の届出)

第9条 当会社の株主及び登録株式質権者又はそれらの法定代理人は、当会社所定の書式により、住所、氏名及び印鑑を当会社に届け出なければならない。

2 前項の届出事項を変更したときも、同様とする。

 

第3章 株主総会

(招集時期)

第10条 当会社の定時株主総会は、毎事業年度の終了後3か月以内に招集し、臨時株主総会は、必要がある場合に招集する。

(招集権者)

第11条 株主総会は、法令に別段の定めがある場合を除き、取締役が招集する。

(招集通知)

第12条 株主総会の招集通知は、当該株主総会で議決権を行使することができる株主に対し、会日の5日前までに発する。

(株主総会の議長)

第13条 株主総会の議長は、取締役がこれに当たる。

2 取締役に事故があるときは、当該株主総会で議長を選出する。

(株主総会の決議)

第14条 株主総会の決議は、法令又は定款に別段の定めがある場合を除き、出席した議決権を行使することができる株主の議決権の過半数をもって行う。

(議事録)

第15条 株主総会の議事については、開催の日時及び場所、出席した役員並びに議事の経過の要領及びその結果その他法務省令で定める事項を記載又は記録した議事録を作成し、議長及び出席した取締役がこれに署名若しくは記名押印又は電子署名をし、株主総会の日から10年間本店に備え置く。

 

第4章 取締役

(取締役の員数)

第16条 当会社の取締役は、1名とする。

(取締役の資格)

第17条 取締役は、当会社の株主の中から選任する。ただし、必要があるときは、株主以外の者から選任することを妨げない。

(取締役の選任)

第18条 取締役は、株主総会において、議決権を行使することができる株主の議決権の3分の1以上を有する株主が出席し、その議決権の過半数の決議によって選任する。

(取締役の任期)

第19条 取締役の任期は、選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。

 

第5章 計 算

(事業年度)

第20条 当会社の事業年度は、毎年4月1日から翌年3月末日までの年1期とする。

(剰余金の配当)

第21条 剰余金の配当は、毎事業年度末日現在の最終の株主名簿に記載又は記録された株主又は登録株式質権者に対して行う。

(配当の除斥期間)

第22条 剰余金の配当がその支払の提供の日から3年を経過しても受領されないときは、当会社は、その支払義務を免れるものとする。

 

第6章 附 則

(設立に際して出資される財産の価額及び成立後の資本金の額)

第23条 当会社の設立に際して出資される財産の価額は、金100万円とする。

2 当会社の成立後の資本金の額は、金100万円とする。

(最初の事業年度)

第24条 当会社の最初の事業年度は、当会社成立の日から平成〇〇年3月末日までとする。

(設立時取締役)

第25条 当会社の設立時取締役は、次のとおりである。

設立時取締役  〇〇〇〇

(発起人の氏名ほか)

第26条 発起人の氏名、住所及び設立に際して割当てを受ける株式数並びに株式と引換えに払い込む金銭の額は、次のとおりである。

埼玉県さいたま市浦和区常盤〇丁目△番×号

発起人 〇〇〇〇  10株、金100万円

(法令の準拠)

第27条 この定款に規定のない事項は、全て会社法その他の法令に従う。

 

以上、株式会社おがわ設立のため、発起人〇〇〇〇の定款作成代理人である行政書士小川京子は、電磁的記録であるこの定款を作成し、電子署名をする。

平成○○年○○月○○日

埼玉県さいたま市浦和区常盤〇丁目△番×号

発起人  〇〇〇〇

上記発起人の定款作成代理人

埼玉県さいたま市浦和区高砂3丁目12番24号小峰ビル5F

行政書士 小川京子

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ひな形で作った定款でも専門家のチェックを受ければ安心

以上のように、ひな形を活用して定款を作ることは、それほど難しいことではありません。ですが、それだけで完結するのではなく、一度専門家の目を通してみることを強くおすすめします。なぜなら、会社法の下では「定款自治」という考え方があり、定款の内容次第で自主的に運営することができるからです。

「定款自治」という考え方

「定款自治」という考え方は、2006年から施行されている新会社法の重要な概念です。これは、会社が、自ら定めた定款=ルールに沿って、自主的に運営をするという意味です。

旧商法では、資本金の額(株式会社1千万円、有限会社3百万円)や、取締役会の組織にいたるまで法律でさまざまな制約がありました。一方、新会社法では、定款自治、つまり定款で定めることによって、自分たちがやりやすい組織やルールを作って運営することができるようになりました。ただし、何をやってもいいというわけではありません。定款の規定は、会社法やその他の法令に違反していないことはいうまでもありません。問題がある場合、その部分が無効とされるおそれがありますし、場合によっては定款全体が無効になることもあります。

絶対的記載事項、相対的記載事項とは

例えば、絶対に決めておかなければならないこととして、「絶対的記載事項」(会社法第27条)があります。これは一つでも抜けていたり、違法だったりすると、定款そのものが無効となってしまいます。

株式会社では、

◯目的
◯商号
◯本店の所在地
◯設立の際に出資される財産
◯発起人の使命、名称、住所
◯発行可能株式総数

です。

 そのほか、「相対的記載事項」(会社法第29条後段)は、絶対的記載事項のように必ず記載しなければ定款全体が無効になるというものではありませんが、決めたからには書いておかないとその効力が生じなくなってしまいます。

任意的記載事項(会社法第29条後段)は、定款に記載することで会社のルールとすることができるものというものです。

例えば、会社法にあるルールに基づき、定款に次の項目を加えると、万が一相続や一般承継により会社にとって好ましくない人物が株主となって経営に参加する事態を防ぐため、株式を会社に売り渡すことを請求することで取り戻すことができます。

「株式の売渡し請求」(会社法174条)
相続その他の一般承継により当会社の株式を取得した者に対し、当該株式を当会社に売り渡すことを請求することができる。

経営者の考え方をプラスアルファで定款に生かそう

会社の態様や経営者の考え方は多様であり、それぞれの会社に合ったやり方、経営者のこだわりを生かすベターなやり方を定款で表すことは十分可能です。

もちろん定款の内容は後で変更することができますが、その場合は、社長が勝手に変更できるわけではなく、株主総会の議決で変更しなければなりません。

ですから、定款に入れる内容はよく吟味して考えなければなりません。

おがわ行政書士事務所では、テンプレートやひな形で作った定款についても、チェックは大歓迎です。法的な間違いがないかを精査し、入れておいたほうがいい条文について提案します。

定款は公証人に「認証」してもらって効果を発揮する

定款が完成したら、公証役場というところで、公証人に『認証』(法律どおりに作成された、ちゃんとしたものですよというお墨付きのこと) をしてもらう必要があります。

このお墨付きをしてもらって初めて、定款が有効になります。

定款は、同じ内容のものを3部

・公証役場で保存される分

・会社に保存する分

・設立の登記をするときに、法務局に提出する分

を作ります。そして、この認証を受けた3部の定款のうち、公証人が『謄本』と印を押したものを、法務局に提出することになります。

 

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