目次
まずは大まかな設立手順をざっくり理解しましょう
会社設立というと難しく感じる人も多いと思いますが、まずは大まかな流れについてざっくり理解しましょう。
まずは会社の憲法である定款を作ります。それは作っただけでは効力を発揮しないので公証人さんのところで「認証」というお墨付きをもらいます。そして、それを法務局で「登記」することで会社の仲間入りができる―ということです。
具体的な作業の手順は以下のようになります。
①会社の基本事項の決定
②定款を作成する
③公証役場で定款の認証を受ける
④資本金の払込
⑤登記書類の作成・法務局へ申請
⑥開業の届出等
⑦設立完了
定款を作る前に会社の基本事項を決めておこう
いきなりひな形などを見て定款を作るのはちょっと置いておいて。その前に、会社の基本事項についてじっくりと考えて決めておきましょう。これはそのまま定款づくりの準備となります。
会社の構成を決める
まずは実際に会社を運営する役員をどうするか決めます。全ての会社には株主総会があり、役員として取締役が最低一人必要です(逆に言うと取締役=自分1人だけで設立できます)。今後のトラブルを避けるためにも、役員は必要最低限の人数で構成したほうがいいでしょう。
大きく分けて2タイプがあり、タイプ別に以下のような機関が必要です。
▼ 自分ひとりで意思決定を行い、あるいは家族だけで経営していくタイプ
従来の有限会社と同じような機関設計
*設置する機関: 株主総会、取締役
*取締役の人数: 1名~2名
▼ 取締役の合議制で意思決定を行い、監査役が経営のチェックを行うので独断的にならない経営をしていくタイプ
従来の株式会社と同じような機関設計タイプ
*設置する機関: 株主総会、取締役、取締役会、監査役
*取締役会を設置したことで 取締役が3名以上、監査役か会計参与が最低1名必要になります
会社名(商号)を決める
会社名のことを商号といい、自由に決めることができます。ただし、次のような最低限のルールがあります。商号は会社の顔となる名前であり、ずっと付き合っていくものですから、じっくりと検討して決めたいものです。
▼ 会社名にそれぞれの形態に合わせて「株式会社」「合同会社」「合資会社」「合名会社」と入れる(会社法第6条2項)
合同会社なのに株式会社としたり、株式会社なのに合名会社と付けてはいけません!
▼ 他の会社と誤解されるおそれのある名前はつけてはいけない(会社法第8条1項)。
他社とよく似た商号で登記をすることができても、他社の会社名を使用し、他社の営業上の利益を侵害すると、訴えられる可能性があります。同じ業種で全く同じ会社名、とても似通った会社名があったら、その社名は避けておく方が無難です。
▼ 同じ住所で同じ名前の会社を登記することはできない(商業登記法第27条)
多数の会社が入っているビルなどでは、同一住所に同一名の会社に気をつける必要があります。
登記可能なバーチャルオフィスを本店所在地として登記する方も増えました。このケースも十分注意しましょう。
▼ ギリシア文字、記号の@など、使用できない文字がある(商業登記規則第50条)
詳しくは、法務省HP(http://www.moj.go.jp/MINJI/minji44.html)をご覧ください。
事務所名が決まったら、類似商号がないか調査しましょう。
方法は2つあります。
① 管轄の法務局に出向き、閲覧申請をして調べる
法務局には、商号調査のための申請書があります。「登記事項要約書交付閲覧申請書」という書類に記入し、商号調査簿という欄にチェックを入れて窓口に提出すれば、無料で閲覧できます。
② 登記供託オンライン申請システムで調べる。
ID登録等をすることで、ネットで調べることができます。
事務所の場所を決める
これは定款でいう「本店の所在地」(会社法第27条第3号)です。登記簿では詳しい住所を書きますが、定款では市区町村名までとします。
登記簿には詳しい住所を入れる必要があり、誰でも閲覧することができます。
(ちなみに代表取締役の住所も登記事項です)
自宅や賃貸オフィスだけでなく、最近では、レンタルオフィスやバーチャルオフィス、コワーキングスペースでも登記可能なところも多くあります。
一つ注意しなければならないのは、賃貸物件を本店とする場合、賃貸借契約の内容によっては「法人不可」となっているものがあります。契約書をチェックしてみましょう。
事業の内容を決める
事業内容のことを「目的」(会社法第27条第1号)といいます。定款に、「事業目的」として書き入れなければなりません。
一般的な基準として、以下の4点があげられます。
①適法性
法令に違反していないこと、公序良俗に反していないこと
②営利性
営利を追求したものになっていること(ボランティア等の非営利目的は不可)
③明確性
誰が見ても分かるようになっていること
④具体性
抽象的なものになっていないこと
ここはよく考えて決めなければなりません。なぜなら会社は、定款に事業目的として書いてある事業しか行うことができないということです。定款に書いていなかった事業を始めたい場合には、定款を変更して、再度『変更登記』 をしなければなりません。手間もお金もかかってしまいます。
将来もしかしたら事業とするかもしれないと思われるものは、事業目的に最初から入れておきましょう。そして、目的の最後には、
「前号に付帯する一切の業務」
と書いておくと、今後の業務が広がります。
事業目的は、会社の登記簿を取ったら、誰でも見ることができます。取引先や融資先から「いったい何をやる会社なんだ?」と不審がられないようなものにしましょう。
加えて、許認可を取る予定のある場合は、さらに慎重に決める必要があります。許認可の種類によっては、事業目的にその事業を入れておかなければならないからです。
発起人を誰にするか、出資する金額を決める
設立を企画し、設立の作業をする人を発起人といいます。あなたが一人で会社を作ろうとしているなら、発起人はあなた一人です。
定款に記入する発起人の住所・氏名などは、印鑑証明書と一言一句違わないようにしなければなりません。事前に発起人個人の印鑑証明書を市町村役場で取っておきましょう。
取締役と任期を決める
取締役は通常、発起人の中から選びます。取締役が一人しかいない場合は、自動的にその人が代表取締役(社長)になります。
任期は原則2年となっていますが、最長10年まで事由に決めることができます。
任期を終えると、同じ人が続けて役員を続ける場合でも、役員の変更登記をしなければなりません。その際、印紙税や司法書士への依頼費用がかかってしまうので、取締役が自分一人や家族経営の場合は、任期を最長の10年としたほうがいいでしょう。
ただし、複数の取締役がいるような場合は、途中でやめさせるわけにもいかないので、任期についてよく必要があります。
資本金の額と資本金を出す人を決める
現在の会社法では、資本金は1円からOKとなっています(1990年改正の旧商法では、株式会社は1000万円、有限会社は300万円以上が必要でした)。
しかし、実際に「資本金1円」として事業を始める人はほとんどいません。なぜなら、銀行から融資を受けるにしても、取引先が登記簿謄本をチェックすることを考えても、「資本金1円」の会社は信頼に値するかどうか疑問だからです。
株式会社を設立する際の平均資本金額は約300万円。大体300万円から1000万円未満とする会社が多いです。資本金は「初期費用+3ヶ月分の運転資金を用意」「取引先や仕入先の企業規模」「創業融資」などを考慮して決めましょう。
また次の2点にも注意が必要です。
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▼ 資本金が1000万円を超えると、初年度から消費税が課される。
通常は設立初年度は、売上が1000万円以上あったとしても消費税が免除されます。
▼ 創業融資は、自己資本の2倍までしか借りることができない。
創業の際に日本政策金融公庫などから融資を受ける予定にしている人は、さらに注意が必要です。創業融資は、資本金の2倍までしか借りることができません。
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そして、
1株の金額 × 設立時に発行する株式の総数 = 設立時の資本金の額とします。
例えば、一株1万円で、設立時に500株発行するとします。
1万円 × 500株 = 500万円 が、設立時の資本金の額となります。
資本金を出した人は、株式会社の場合は、出資比率に応じて株式を持つことになります。合同会社の場合は、メンバー間で自由に決めることができます。もちろんあなた一人が出資した場合は100%あなたが株主です。
また、資本金を投資家など外部の人に出資してもらう人は「募集設立」という、少し面倒な手続きが必要になるので、注意が必要です。
将来発行することができる株式の総数を決める
これを発行可能株式総数といいます。何株でもいいです。
例えば、発行可能株式総数を1000株とした場合は、将来、1000万円まで資本金を増やすことができます。
公告の方法を決める
株式会社には、貸借対照表などの会計書類を公開する決算公告の義務があります。「決算公告」は、毎年の株主総会が終わってから行います。
以下の3つの方法があります。
①国が発行する官報に掲載する。
一番費用がかからないので、小さい会社ではこの方法が一般的です。
②全国紙や地方紙に掲載する。
日本経済新聞などの全国紙、埼玉新聞などの地方紙に、広告費を払って掲載します。
③ホームページで過去5年分の決算書類を公開する。
自社のホームページなら費用がかからないのでは・・・と思いきや、公開するだけでなく、公開したホームページを「一定期間、公開していましたよ」ということを調査機関に証明してもらわなくてはいけません。その費用が結構高くついてしまうことがあります。
事業年度を決める
会社の会計は、『4月1日~翌年3月31日まで』のように期間を区切ってチェックする必要があります。この期間を『事業年度』といい、事業年度の最終日を『決算日』といいます。
多くの会社は、4月から新しい年度をスタートし、翌年3月を期末としています。でも、事業年度は自由に決めることができ(後から変更することもできます)、必ずしも期首を4月にする必要はありません。
毎年、決算後2 ヶ月以内に法人税の確定申告をしなければなりません。
会社の繁忙期と確定申告期限が、重ならないほうがよいでしょう。